卒業式を翌日に控え、宮城県東松島市立野蒜小の体育館に紅白幕が飾られた2011年3月11日。同市で震度6強の地震が起き、保育園児やお年寄りら約100人が避難した体育館を、高さ約3メートルの津波が襲う。東日本大震災でここでは少なくとも13人が亡くなった。
やがて閉校となった野蒜小の校舎を活用し、防災体験型宿泊施設「KIBOTCHA(キボッチャ)」が18年にオープン。防災教育キャンプなどのプログラムを用意し、災害から命を守る考え方や技術を身に付けてもらう。「遊びを通じて学んだ、楽しい体験は忘れません」と運営会社社長の三井紀代子さんは話す。
「防災教育」をのぞいた。元陸上自衛隊員のスタッフが、避難や救助の際に役立つ、ロープの結び方やほふく前進を実演。参加した小学生が取り組み、「できたよ!」という声が飛び交う。
本格的なのは「いかだ造り」。この日、認定NPO法人「ハートフル福祉募金」(仙台市)が主催した、聴覚障害のある小中学生の交流キャンプ参加者が挑戦した。月浜海水浴場に移動し、浜辺で発泡スチロールや木枠、竹の棒をロープでくくり、いかだは完成。
約500メートル離れた無人島の唐戸島を目指し、い...