ここ10年、社会の急速な変化とともに、報道産業を取り巻く環境も激変してきた。
スマートフォンとともにSNSが普及し、災害や事故、事件などの第1報を社会に伝える役割が、報道機関から一般市民の手に移った。
同時に、報道機関というビジネスモデル自体も大きく変化を迫られている。紙の新聞の発行部数や購読者数は年々減少し、特に2010年代後半は「新聞大国」だったわが国でも購読者数減少により加速度がついた格好だ。
各社はインターネットを通じた電子版でのサービス提供にかじを切り、収益源も紙の新聞の購読料から電子版での課金にシフトしている。しかし、これらの取り組みは世界的にもまだまだ模索の段階であり、ニューヨーク・タイムズなど一部で相対的にうまくいった事例が出てきているのみだ。全体として、報道産業を成長産業に再度変えられるようなビジネスモデル上の妙手は、まだ見つかっていない。
そうした中で、昨今のジェネレーティブAI(生成AI)の登場と急速な普及がより大きな課題に浮上しつつある。デマやフェイクニュースを作るコストが限りなくゼロに近づいているのだ。過去にも小欄で指摘した通り、AIが生成した「災害デマ」画...