筆者の家で最初に海外旅行をした母が、友人と訪れた場所は香港だった。もう40年以上も昔のこと。100万ドルの夜景やタイガーバームガーデンの土産話をひとしきりした後、「でも一番驚いたのは、夜中に子どもが外で遊んだりご飯を食べたりしていたこと」と話していた。
夜8時に寝かされていた身として当時はうらやましく聞いていた。今、香港で暮らすようになって夜遊びはほとんどしない。夜にできることは昼でもできることを知ってしまったし、家で過ごすことに不自由を感じない。何よりも体がきつい。つまりは年を取ったのだ。
香港政府は最近、市民を夜更かしさせようと躍起になっている。9月中旬にナイトタイムエコノミー(夜間の経済活動)の振興に向けたプロジェクト「香港夜繽紛(ナイト・バイブス・ホンコン)」の開始を宣言。夜間の観光イベントや夜市(ナイトマーケット)の開催、美術館・博物館の開館時間延長などで経済活動を活性化させ、景気を底上げしようという魂胆だ。
イベントの多くは年内、一部は来年2月まで行われる。盛りだくさんの内容だが、果たして政府の思惑通りにいくだろうか。少子高齢化が叫ばれて久しい香港の若さが試される。(香港...