鳥取市から東京を経由し、空路で約4時間半。北海道釧路市の釧路空港に降り立つと、さわやかな秋晴れが広がっていた。釧路市の担当者は「いつもはもっと寒いんです」と苦笑する。北の大地は、季節外れの暖かさで鳥取市からの訪問団一行を迎えた。
釧路市内の鳥取神社にある「鳥取開村記念碑」には、移住した鳥取士族の当主の名前が刻まれている。
「米も満足にできない土地だった」。鳥取士族の子孫、安田圭佑(けいゆう)さん(83)は、記念碑に刻まれた先祖の名前に目を細めた。
1884年6月9日、鳥取士族を乗せた船は、釧路市南浜町付近に到着。2年間で105戸513人が移住し、鳥取村をつくった。仁々志別川沿いに入植した士族らの生活は過酷を極めた。移住者の日誌「坂本友規日誌」によると、夏でも霜に見舞われ、気温が上がると濃霧が発生。降雨時は川が氾濫を繰り返した。