五輪の価値を前向きに語れなくなった日本の雰囲気を残念に思う

  •  茂木健一郎さん
  •  2030年冬季五輪・パラリンピックの招致断念を表明する、札幌市の秋元克広市長=10月11日午後、東京都新宿区
  •  札幌市内に掲げられている2030年冬季五輪・パラリンピック招致のポスター=10月11日午前
  •  茂木健一郎さん(撮影・徳丸篤史)

 札幌市と日本オリンピック委員会(JOC)が、2030年冬季五輪・パラリンピックの招致活動を中止すると正式に発表した。諸状況を考えればやむを得ないと感じる一方で、オリンピックの楽しさ、意義が次第に日本人から遠いものになってしまうことを懸念する。

 今回の決定に大きな影響を与えた前回の東京五輪について言えば、汚職事件に加えて、やはりコロナ禍の負の作用が決定的だったように思う。無観客開催の下、最後までやりきったことは世界から称賛されたが、一方で開催国である日本の私たちが受け取るはずだった「感動」が決定的に損なわれてしまった。

 400メートルハードルでシドニー、アテネ、北京の3大会でオリンピックに出場した経験のあるアスリートの為末大さんに伺ったところによると、オリンピックは通常の世界大会とは全く違うのだという。まず、さまざまな競技の出場者が選手村で一緒に生活するところが異なる。種目によって体形や性格もさまざまで、これから本番を迎える選手たちの緊張と、競技を終えた選手たちのリラックスした雰囲気のコントラストも興味深いのだという。

 オリンピックの開催都市では、競技を終えた選手たちが街に出て、地元の...

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