まず守られるべきは当事者の心と体 性別変更の手術要件は違憲

  •  香山リカ

 病気になったわけでもないのに手術をして臓器を摘出する。

 そう聞くと、多くの人はギョッとすることだろう。ところが実際に、そういった手術が法律で必要とされていたケースがあるのだ。これまで日本の法律では、性同一性障害で戸籍上の性別を変更する際の条件として「生殖腺がないか、その機能を永続的に欠く場合のみ」と定められていた。つまり、原則的には手術が必要ということになる。

 これに対して10月25日、最高裁は「手術を義務づけるのは憲法に違反している」とする判決を出した。「意思に反して体を傷つけられない自由を制約しており、手術を受けるか、戸籍上の性別変更を断念するかという過酷な二者択一を迫っている」というのが違憲の理由だ。今後、国会は法律の見直しを迫られることになる。

 私もこれまで診察室で、性同一性障害により戸籍の性別を変更したい、という人たちに会う機会があった。その場合、たとえば元の戸籍が女性なら子宮や卵巣の摘出が必要となる。かつてはいま以上に「健康なからだから臓器を摘出する」という手術を引き受けてくれる病院が国内には少なく、海外まで出かけていった人もいた。また、手術による合併症のリスクもあり、実...

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