関東大震災から5日後の1923年9月6日、千葉県福田村(現野田市)で、香川県の被差別部落から来た薬の行商団15人のうち9人が惨殺された。この事件を題材にした劇映画「福田村事件」(森達也監督)が大ヒットし、全国で上映が続いている。
制作する上で重要な資料となったのが千葉県流山市の辻野弥生さん(82)のノンフィクション「福田村事件 関東大震災・知られざる悲劇」(五月書房新社)だ。もとは地方出版社から刊行されていたが今年7月、増補改訂版として復刊された。こちらも好評で、すでに6刷となっている。
当時、「井戸に毒を入れた」などのデマがもとで、多くの朝鮮人が虐殺されたが、香川の行商人らは方言から朝鮮人と疑われ、行商用の鑑札を持っていたにもかかわらず殺害された。地元でタブーになっていた事件を丹念に掘り起こした辻野さんは、映画製作にも企画協力者として関わった。映画の反響や、都合の悪い歴史を活字にする意義などを聞いた。ロングインタビューを2回に分けてお届けする。
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▽予想外のヒット
-映画の公開前は、お客が来るだろうか?と心配されていたそうですね。
はい。ところがふたを開けてみ...