関東大震災から5日後の1923年9月6日、千葉県福田村(現野田市)で、香川県の被差別部落から来た薬の行商団15人のうち9人が惨殺された。
当時、「井戸に毒を入れた」などのデマがもとで多くの朝鮮人が虐殺された中、行商人らは方言から朝鮮人と疑われ、行商用の鑑札を持っていたにもかかわらず殺害された。地元でタブーになってきたこの事件。千葉県流山市の辻野弥生さん(82)は、24年前から執念の取材を続け、ノンフィクション「福田村事件 関東大震災・知られざる悲劇」(五月書房新社)をまとめた。話題の劇映画「福田村事件」(森達也監督)にも企画協力者として関わっている。
辻野さんへのロングインタビュー(下)では、背景にある差別の問題や、朝鮮人虐殺そのものを否定するような言説への反論、過ちを二度と繰り返さないためにはどうすればよいかなどを聞いた。
▽家庭環境が影響
-この事件の取材に、これだけ熱心に取り組めたのはなぜでしょうか。
私は、弱い立場の人を放っておけない気持ちをずっと持ってきました。これには私の育った家庭環境があると思います。
私の父の戦争体験も影響しています。父は日中戦争に従軍しました。中国で...