2001年に閉山した日南町多里のクロム鉱山「若松鉱山」のシンポジウムが4日、同町霞の町総合文化センターであった。産業遺産学会(横山悦生会長)が全国大会として開催し、基調講演やパネル討論を通じて日本の発展を支えた鉱山の歴史的価値や観光利用について考えた。
基調講演では、同学会の山田大隆理事が研究資料や現場で撮影した写真を使って若松鉱山の特徴を解説。「全国シェア6割以上を占めた日本最大のクロム鉱山で、産業遺産として価値が高い」と評価した。
パネル討論には、廃虚で町おこしに取り組む人や文化財保護に携わる行政職員らが登壇。「鉱山遺産の保存と活用」をテーマに語り合った。
10月に若松鉱山のツアーを企画したNPO法人J―heritageの前畑洋平さんは「実際に使われていた機械がほぼ全て残されていることや、ガイドが鉱山で働いていた町民だったことが参加者から好評だった」と振り返り、住民と廃虚マニアとの距離の近さが若松鉱山の魅力だと力説。頼めば見せてもらえる「合法廃虚」として、マニアの間でポジティブに語られていると紹介した。
鳥取県文化財課の松本絵理さんは実測調査の結果、若松鉱山は建物の傷みが進んでいると指摘。「これまでの研究を整理し、記録調査を進めていく必要があるが、記録を取るにしてもぎりぎりの時期に来ている」と訴えた。
大会は「鉱山遺構の研究調査と明日への議論を深めることを強く希望し、学会は後押しをする」との宣言を採択した。