柄本佑さんの目はどこか深い淵を思わせる。多くを語りかけるようだったり、画面を見ている側の気持ちが映し出されるようだったり…。独特の個性を放つ実力派の俳優だ。11月10日公開の映画「花腐(くた)し」(荒井晴彦監督、綾野剛主演)では、主人公と相対する脚本家志望だった男を軽やかに演じた。
原作は松浦寿輝さんによる芥川賞受賞の同名小説。経営する事務所が行き詰まり、死んだ同居相手の喪失感にさいなまれながら鬱屈(うっくつ)した日々を送る男が、古アパートに居座る奇妙な男と出会う物語だ。映画「Wの悲劇」など脚本家としてキャリアを積んできた荒井監督は、主人公の設定を何年も作品を撮れないでいるピンク映画の監督に変え、男2人と1人の女の過去と現在を交錯させ「ピンク映画へのレクイエム」も込めて脚色した。映画「火口のふたり」(2019年)以来、荒井監督と再びタッグを組んだ柄本さんに話を聞いた。
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―「花腐し」の出演を決めた理由は?
脚本がめっぽう面白いので、やらないわけにはいかないなというのが一番の理由です。あとは荒井さんが監督だからということですね。荒井さんのことは(父で俳優の柄...