その静かなたたずまいから、目を離すことができない。主演を務めた映画「朝がくるとむなしくなる」での唐田えりかの存在感は、特別だ。石橋夕帆監督が唐田の「再出発」を念頭に脚本を書いたという作品に「すごく愛情を感じた。その気持ちに一生懸命応えたかった」との思いで臨んだ。(共同通信=鈴木沙巴良)
演じたのは、会社を辞めてコンビニのアルバイトとして働きながら、そのことを親に伝えられない希。店長や同僚との距離感、慣れない接客業に戸惑う中で、中学時代の同級生加奈子(芋生悠)と偶然出会い、徐々に日常が動き始める。
「芸能の仕事を始めて初めてできた友達」という芋生とは初共演。少しずつ距離を縮めた2人が居酒屋で親密に会話を交わすシーンでは即興が交じり、加奈子の家で希が思いを吐露する場面では自然と感情が涙となってあふれた。
「私は不器用で、技術がまだ備わっていない。現場では余計なことを考えず、その場で感じたことを素直に出す」と唐田。もともと演技に苦手意識を持っていたが、主演した「寝ても覚めても」(2018年)の濱口竜介監督と出会い、変わった。台本の読み合わせで感情を排した棒読みをさせることで知られる濱口監督...