絆を求めて 第1部 心の奥底(2)医療観察制度(下)複雑な胸中

 自立を目指す先に…

  • 医療観察制度による治療を終え、社会復帰を目指す大石さん(仮名)=昨年12月29日午後5時、鳥取県内

 社会医療法人の相談支援専門員(47)に案内されたのは、市街地の3階建てアパート。1DKの室内は掃除が行き届いている。記者を待っていたのだろうか、ホットカーペットは温かい。

 大石和也さん=仮名=の年齢は40代だが、若く見えた。「友達や近所の人たちと会えなくなってしまいました。もう元には戻らないかもしれないですけど、病気でなかった頃のような生活を取り戻したいです」。静かに、丁寧な口調で振り返り始めた。

 30代の頃に仕事のストレスが原因で統合失調症を発症。何者かに監視されているような幻覚、幻聴が頻発し、現実との境界が分からなくなった。ある日、自宅屋根に殺し屋がいると思い込み、「殺される前に自殺するしかない」と自室に火を付けた。放火の疑いで現行犯逮捕され、その後、医療観察制度の適用を決める審判が下った。

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罪を犯した者の「心の奥底」に迫った第1部で感想、意見を寄せて頂きました。読者の声を受けて設定した第2部のテーマは「葛藤」です。夫婦や親子を結ぶ横糸、縦糸のもつれを通して絆のありようを考えます。

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