社会医療法人の相談支援専門員(47)に案内されたのは、市街地の3階建てアパート。1DKの室内は掃除が行き届いている。記者を待っていたのだろうか、ホットカーペットは温かい。
大石和也さん=仮名=の年齢は40代だが、若く見えた。「友達や近所の人たちと会えなくなってしまいました。もう元には戻らないかもしれないですけど、病気でなかった頃のような生活を取り戻したいです」。静かに、丁寧な口調で振り返り始めた。
30代の頃に仕事のストレスが原因で統合失調症を発症。何者かに監視されているような幻覚、幻聴が頻発し、現実との境界が分からなくなった。ある日、自宅屋根に殺し屋がいると思い込み、「殺される前に自殺するしかない」と自室に火を付けた。放火の疑いで現行犯逮捕され、その後、医療観察制度の適用を決める審判が下った。