金沢市の近くの大学に友人がいて、一時期よく通った。古都金沢から車で能登半島を北上し、途中で砂浜を走った。「千里浜(ちりはま)なぎさドライブウェイ」である。
向かう道すがら、友人が「海岸をそのまま走れるんだよ」と説明してくれても、正直なんのことか分からなかった。後で知ったが、なぎさドライブウェイは石川県羽咋(はくい)市と宝達志水(ほうだつしみず)町にまたがり、全長約8キロメートル。日本で唯一、波打ち際の砂浜を一般の乗用車やバスが通行できる観光道路ということだった。
何しろ日本で唯一だから当然、初体験。概念として私の脳の中になかったのも仕方がない。金沢から一般道を通り、左にハンドルを切って、目の前に現れた広々とした砂浜の上を友人の車が走り出した時には、なんとも言えない驚きと開放感があった。
なぎさドライブウェイは、能登半島の魅力を象徴する場所の一つだと思う。海と、空と、爽やかな風と。車を止めて砂浜に出ると、千鳥がトコトコと波打ち際を歩いて、やがて飛び立った。自分もまた、自然と一体になったような気がした。
能登半島には取材などで何度も訪れた。輪島塗の漆器を作っている赤木明登(あかぎ・あきと...