1月末から2月初めにかけ、バングラデシュの首都ダッカを訪れ、経済学者で実業家のムハマド・ユヌスさんとお話しする機会があった。ユヌスさんは自ら創設した「グラミン銀行」と共に、2006年のノーベル平和賞を受けている。著作などを通じて存じ上げていたが、初めてお目にかかると柔らかく優しく、そして思慮深い方だった。
グラミン銀行は、貧困であえぐ人々に無担保で少額のお金を貸し付ける事業で「ソーシャルビジネス」の先駆けとなった。現在では、銀行だけでなくさまざまな社会問題の解決に取り組むグラミングループへと発展している。
バングラデシュは、世界で最も貧しい「後発開発途上国」と位置付けられる。ユヌスさんは、母国の経済的に恵まれない人たちの暮らしを経済学の理論で救えないことに気付き、具体的なアクションを起こした。
繊維産業を中心に経済成長が進み、日本の開発援助で整備された都市高速鉄道(ダッカメトロ)も運用されるなど、発展の中にある首都ダッカ。それでも、貧困の問題がいまだに大きく立ちはだかっているのを街のあちらこちらで確認できた。
今回の旅は、グラミングループと現地合弁会社を作り、バングラデシュの貧困解消...