桜の開花は「国民的関心事」である。今年は思っていたよりも遅かった。雨の日が続き、ようやく3月末になって各地で本格的に咲き始めた。桜の祭りやフェスを運営している人たちはやきもきしただろうし、関連ビジネスの方々は気が気でなかったろう。
日本人が桜の開花に一喜一憂するのは伝統だが、最近では国外でも関心が広がっている。桜の下で楽しい時間を過ごす「花見」が世界的に有名になって、それを目当てに訪日する観光客も多い。いつ開花するのか、ツアーを主催する会社や、個人の訪日客が強い関心を寄せている。日本だけでなく、もはや海外でもニュース価値を持つのだ。
なぜ、これほどまでに桜の開花は私たちの胸を騒がせるのだろうか? 人間の脳は、不確実な刺激に対して強く反応する。とりわけ、自分たちにとって「うれしいこと」が予想できないかたちで起こると、神経伝達物質であるドーパミンが媒介する報酬系が活性化する。
桜が咲くと、脳は喜ぶ。その姿は愛らしく、美しい。長い冬が終わって、春が来たという開放感がある。花見のような楽しい機会もあるし、さまざまな人生の節目にもなる。花自体が本来持つ魅力に文化的な意味合いが重なって、桜は特別...