【3分間の聴・読・観!(22)】橋本治はまだ近くにいる―細部に理解の種

 忘却から生き延びるために―森村泰昌の芸術論

  •  橋本治 第19回駒場祭ポスター原画 神奈川近代文学館蔵・橋本治文庫
  •  橋本治『双調 平家物語』原稿 神奈川近代文学館蔵・橋本治文庫
  •  橋本治(2009年撮影)
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 「帰って来た橋本治展」(横浜市の神奈川近代文学館、2024年6月2日まで)の開催を知り、「亡くなってもう5年か」と思ったのだが、それは、いつまでも橋本が遠くに行った気がしないからだ。積み上げられた膨大な仕事を読者も世の中も咀嚼(そしゃく)しきれていないと思う。橋本はまだ近くにいる。本展には理解を深める種がちりばめられていた。

 展示の冒頭で橋本を一躍有名にした「第19回駒場祭ポスター原画」(1968年)が目を引く。「とめてくれるな/おっかさん/背中のいちょうが/泣いている/男東大どこへ行く」。ポスター全体から才気がほとばしる。この熱量を終生維持していたのだろう。そのことを実感する展覧会でもある。

 1977年の「桃尻娘」で作家としてデビューし、70歳で亡くなるまで創作、評論、エッセーなどを書き続けた。「花咲く乙女たちのキンピラゴボウ」「桃尻語訳 枕草子」「窯変 源氏物語」「『三島由紀夫』とはなにものだったのか」といった作品の数々で、対象も古典文学、歌舞伎、浄瑠璃、日本美術、少女漫画、言文一致、社会風俗など実に幅広い。猛烈に書きまくった印象がある。

 会場では多数の直筆原稿や書簡を目にするこ...

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