【心へのフォーカス#1】ラストツアーの尾崎豊を活写 闘う心の奥底が見えた ハービー・山口

  •  スタジオでのリハーサル中、つかの間、笑顔を見せた尾崎豊(写真集「LOVE WAY」より)
  •  ハービー・山口さん(撮影・山口大輝)

 被写体の「明日の幸せ」をそっと願って撮り続け、半世紀を超えた写真家のハービー・山口さんが、著名人を活写したカットを紹介。撮影秘話や心の交流を振り返る連載の第1回。

   ×   ×

 自分の心に正直に生きようとすれば、立ちふさがる社会という壁。シンガー・ソングライター尾崎豊の必死に闘う生き方に1980~90年代、多くの若者が共感し、熱狂した。

 彼から撮影の依頼が91年に来た。「できるだけ素顔を写してほしい」。ラストとなったツアー「BIRTH」のカメラマンとして、私も思いに応えようと思った。

 コンサートの直前、東京都内のスタジオで、メンバー全員がセットリストを一曲ずつ確認するリハーサルがあった。機材が所狭しと並ぶ中、尾崎はスピーカーによじ登り、絶叫。火の出るような迫力に至近距離で圧倒された。時折見せる人懐っこい笑顔にも感激し、夢中でシャッターを切った。

 全こまを印画紙にプリントした「ベタ焼き」を1週間、尾崎本人に預けて選んでもらった。受け取りに行くと、好きなカットに〇、発表を控えてほしいものに×、微妙な写真に△を付けていた。

 格好良く決まったカットや穏やかな表情ではなく、横顔や後ろ姿、多少...

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