ソプラノ歌手 梨谷桃子さん

関西から世界に歌声を響かせる

 「ソプラノとは声域区分の一つです。女声の中でも高い音域を歌います」。関西を拠点に活躍するソプラノ歌手の梨谷桃子さんは奈良県桜井市出身。「古墳や自然に囲まれた歴史深い場所で野山を駆け回り育ちました。歌うことは好きでしたがお花屋さんかピアニストになるのが夢でした。今でもピアノは弾けませんが…」と笑いながら幼少期を振り返る。

 転機が訪れたのは高校時代、校内の芸術鑑賞会で『カルメン』に合唱パートで出演。「もっと真剣に学びたい」と思うようになり大阪音楽大学へ進学した。片道2時間の通学時間、ガソリンスタンドでアルバイトをしながら勉学に励んだ。

 プロになって大変だったことを尋ねると「音楽一本ではなかなか食べていけない。でも生きていくためには稼がないといけない。大変ですが、歌うことが好きなので頑張れます」とリアルな現状を語った。卒業後は、より個性が尊重される環境を求めてイタリアへ留学。帰国後に開催された『第32回摂津音楽祭リトルカメリアコンクール』(2018)では金賞(大阪府知事賞)に輝き注目を集めた。

 その後、ヴェローナの劇場で行われる『蝶々夫人』のオーディションに合格。だが、稽古が始まった瞬間にコロナが襲いロックダウンを経験。再開のめどがたたず本番のステージに立つことはできなかった。現在、尼崎にある自宅には防音室を完備し時間を気にすることなく練習に励んでいる。「チャンスがあれば海外や東京の舞台にも出たいです。そのためには常にアンテナを張っています。自己研さんにも手を抜きたくないですね」。

 6月にはコロナに阻まれ実現できなかったタイトルロール『蝶々夫人』を地元である関西で披露することが決定した。さまざまな思いを歌声に乗せ、人々の心に響き渡らせていく。

(コラムニスト)

 ■公演のお知らせ
 『蝶々夫人』
日時 6月9日(金)
開場 午後4時、
   開演同5時
場所 アルカスホール
  (京阪本線寝屋川市駅)

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