被写体の「明日の幸せ」をそっと願って撮り続け、半世紀を超えた写真家のハービー・山口さんが、著名人を活写したカットを紹介。撮影秘話や心の交流を振り返る連載の第4回。
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私がロンドンにいた1970~80年代、パンクやニューウエーブが生まれ、日々新しいものやムーブメントが誕生するような高揚感と刺激にあふれていた。
音楽界で流行したパンクを服に持ち込んだファッションデザイナー、ヴィヴィアン・ウエストウッドはあの時代をリードしていたと私は思う。83年にロンドンの仕事場で彼女を撮影する機会に恵まれた。
カメラを構えていると、若い女性スタッフがヴィヴィアンに打ち合わせでの不明点を尋ねていた。スタッフが「私が若すぎるから理解できないのかしら」と漏らすと、「分からないことを恥じないで。それも正直なあなた。分からないところがあることは個性なのよ」とヴィヴィアン。懐の深さに私は感動を覚えた。
同年、ヴィヴィアンは自身の名を冠したブランドでパリ・コレクションに進出。やがて作風はエレガントな路線へと変わったが「既成概念にとらわれない。もっと自由でいい」というメッセージがアイテムに宿る。
ヴィヴ...