【相談】
私の父は小さな会社を経営していましたが、62歳の時、人にだまされて1億円近い借金を負い、母と一緒に自ら命を絶ちました。それから30年近くたち、父の死んだ年齢が近づいてくることに恐ろしさを感じます。自分の人生もそこで終わるような、あるいは自分も命を絶ってしまうような、そんな気がしてしまいます。老後の手本がないので、その年齢を超えて生きていくのがどういうことなのか分かりません。最近は「この年になって、また一からやり直せと言われても酷な話だよな」と、父の気持ちも分かるようになり、ますます父と同化していくようです。62歳を超えれば、私は新たな人生を生きられるのでしょうか。人は老いと死の影を感じながら前向きに生きていけるのでしょうか。(57歳 男性 会社員 神奈川県)
【養老孟司先生の回答】
家族の死は大変な苦痛を伴うものです。それぞれのケースが違うので単純な比較はできませんが、不慮の死であれば、苦しみはなおさらです。
▽私も手本がない
私は子どもの頃、あいさつができませんでした。周囲の大人はおそらく私を変な子どもだと思っていたでしょう。その理由が分かったのは大人になってからです。
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