東京都杉並区の善福寺池に発し、南東へ流れて神田川に合流する善福寺川。住宅地の中の地味な川だが、何種類もの水鳥が生息し、自然を身近に感じられる場所でもある。JR荻窪駅から出発し、隣の西荻窪駅付近まで流れをさかのぼった。
荻窪駅西口の「すずらん通り」を南西に抜けて、環状8号線を渡ると善福寺川に行き当たる。カモの泳ぐ姿が目に入った。時折、逆立ちの姿勢で頭を水の中に突っ込み、餌を狙っている。橋の下では真っ黒いカワウが羽を広げていた。
この辺りにはカモのほか、シラサギの仲間であるダイサギやコサギが多く、青みがかった灰色のアオサギもよく見かけられる。
流れに沿って北西に進んでいくと、川はやがて東西に走るJRの高架線と交差した。かつて作家の井伏鱒二と太宰治が釣り糸を垂れたのは、この近くだった。
井伏の随筆「荻窪風土記」には「この日、私は太宰を連れて善福寺川の釣場へ行ったが、何もかもお話にならなかった。ガード下の洗い場でも、その下手の薪屋の堰でも釣れなかった」と書いてある。昭和の初め頃で、川には澄んだ水が流れていた。
高架をくぐってさらに先へ進んだ。真中橋でいったん川を離れ、青梅街道へ向かう道を北上...