最近の国内外の風潮を見ていて気になるのは、強ければいい、勝てばいいとでもいうような一部の雰囲気である。
日本でも世界でも、強いものが正しいとの考え方が昔からある。日本のことわざで「無理が通れば道理が引っ込む」、あるいは「勝てば官軍」と言われる。夏目漱石が小説『坊っちゃん』の中で「強者の権利」と訳したのは、英語のmight is rightという表現だった。
選挙において、伝統的なやり方や価値観に縛られない形で当選した為政者が、強気の政治姿勢になるケースが見られる。その際、それまでの不祥事やトラブルが「帳消し」にされることも多い。選挙で勝ったのだから、それで「禊(みそ)ぎ」は済んだと考える有権者も中にはいるようだ。
ドナルド・トランプさんが米大統領に再び当選したのは、疑いなく「民意」の反映である。一方で、前回の選挙の後、トランプさんが敗北を認めず政権移行がスムーズに進まなかったり、連邦議会が襲撃されたり、有罪となった裁判の量刑の言い渡しが延期されたりなどの事態は、まさに「強者の権利」としか言いようがない。そして、一部の人々はそのような変化を認容しているようにも映る。
これらの変化を社会...