第43回とっとり読書絵てがみ・感想文コンクール インタビュー(10) 武本佳奈絵さん 翻訳者

心情伝わりやすい言葉選び

 -「みどりいろのつりがね」翻訳のきっかけを教えてください。

 ドイツやイギリスで出版されていた原書や、日本で過去に出版された絵本を持っていましたが、日本版はすでに絶版していました。作家のプロイスラーと画家のホルツィングのコンビの作品に思い入れがあり、日本の子どもたちにもう一度届ける機会がないかと微力ながら動いていました。絵本の復刊に関していよいよ難しいとなったとき、これからは素話(語り)でこの物語の良さを伝えていこうと決めました。ところが、今回お世話になった編集者さんとの運命的な出会いで、こうして新訳復刊という機会に恵まれました。

 -制作過程で大切にしていることは。

 むかしむかし、ではじまる昔話風の物語です。耳で聞いただけでも情景が浮かび上がり、物語の中の人々の心情が伝わりやすいような言葉選びを心掛けました。復刊のための新訳づくりから、素話、そして今回絵本化が決まるまでの約10年、何百回も声に出して心を込めて語りました。イワンの掘り起こしたみどりいろのつりがねの音を聞いた人々と同じように、私自身もこの絵本に救われました。その音にこれから出合う読者のために、丁寧に言葉を選ぶことを大切にしました。

 -コンクールにチャレンジする子どもたちへメッセージをお願いします。

 昔話は、人が人へ語り継いできた無形のものです。でも、聞くとそこに自分のイメージする絵が浮かび上がり、心には音が鳴り響き、もしかしたら温かさや冷たさのような感覚を肌で感じるかもしれません。たちまち、自分だけの有形なものになります。ぜひ誰かに読んでもらったり、自分で読むなら声を出して、その声を心に響かせて味わってほしいです。そうすれば、一人一人音色の違う鐘の音が聞こえると思うのです。その音を聞いたときの新鮮な心の震えを、そのまま筆に伝えられたら良いですね。

プロフィル

 児童書専門店勤務。「おはなしとあそびのpipio(ピピオ)」を主宰。翻訳書に「皇帝にもらった花のたね」(徳間書店)、「くるくるまわるねこのひげ」(文溪堂)などがある。

募集要項
 ◆内容 課題図書を読み、絵てがみまたは感想文を書いて応募する。各部門1人1点
 ◆応募方法 所定の応募票に必要事項を記入して作品に添付し、〒680-8688日本海新聞事業部「読書コンクール」係へ郵送または持参する
 ◆締め切り
 2025年1月17日(金)必着
※詳しくは日本海新聞ホームページをご覧ください。
主  催 鳥取県学校図書館協議会
     新日本海新聞社
特別協賛 鳥取銀行

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