一度、心に刷り込まれた感情の中で、最も消えにくいものは何であろうか。統計的な裏付けがあるわけではないが、精神科の診察室で感じるそれは「恐怖」である。たとえば乗っていたエレベーターが停電などで止まってしまい恐怖を味わった人が、その後、長期にわたってエレベーターに乗れなくなる、という事例はめずらしくない。
12月14日に北九州市のファストフード店で起きたふたりの中学生殺傷事件は、全国の子どもやその家族に計り知れない恐怖をもたらしたのではないだろうか。学校が終わってから塾に通い、その帰りに今回のような店で軽食を口にしてから帰宅する、という中高生はどこにでもいるはずだ。そのときに突然、襲われても自分の力では防ぎようがない。「保護者が送り迎えする」という手だてはあるが、いつもというわけにはいかないだろう。子どもたちにしても、塾のあとの帰り道や軽食は大切な「自分の時間」として確保したいのではないか。
19日には、殺人未遂容疑で北九州市に住む43歳の男が逮捕された。今回の事件についての背景や動機は、これから徐々に解明されていくのだろう。しかし、それでも全国の人たちが味わった「もし私が狙われたら」「...