石破茂首相が、年頭記者会見や施政方針演説で繰り返し掲げた「楽しい日本」。評判は必ずしも良くないようだが、実は脳科学的には理にかなっている。
もともとは、旧通商産業官僚として1970年の大阪万博の企画立案に関わったことでも知られる作家の故・堺屋太一さんが提唱した言葉。戦前の「強い日本」、戦後の「豊かな日本」に代わる新たな価値観を「楽しい」という表現に託し、日本人が自律的に創造性を発揮する未来を小説で思い描いた。
石破首相はとりわけ、ご自身のライフワークの地方創生と絡めて「楽しい日本」を打ち出した。
不評な理由の一つは、「楽しい日本」と浮かれるような気分になれない世相か。30年間経済が停滞し、手取りの収入も増えず、物価も上がって生活が苦しい中、「楽しい日本」と言われてもシラけてしまう、との声が聞こえる。「楽しいのは石破さんだけでしょ」といった冷めた見方もあるようだ。
しかし、創造的であるためには「楽しい」気持ちであることが必要というのは、脳科学的な事実なのだ。創造的な人は上機嫌で快活、前向き、そして楽観的である。米アカデミー賞の作品賞など8部門に輝いた1984年公開の映画『アマデウス』の...