トランプ米大統領の挑発的な発言が止まらない。19日にはSNSへの投稿で、ウクライナのゼレンスキー大統領を「そこそこ成功したコメディアン」「選挙を経ていない独裁者」と呼んだ。
「トランプ氏の心理状態はどうなっているのか」と疑問を持つ人は多いようで、精神科医の私もしばしばその解説を求められる。しかし、それに応じるのはためらわれる。2021年6月に制定された日本精神神経学会の 「精神科医師の倫理綱領細則」の「地位の乱用の禁止」の項目には、以下のような記載があるからだ。
「精神科医師が、自ら診察を行うことなく、衆目を集める人や著名人の精神状態や人格について、本人の同意なしに公の場で精神医学的な論評することは、専門的技能と地位双方の乱用にあたり、不適切です」(原文のまま)
この倫理綱領に罰則規定はないが、あえて抵触するのは学会の一員として問題であろう。
実は、アメリカの精神医学会にも同様の倫理規定がある。しかし、トランプ第1次政権のとき、あえてその禁を破った精神科医たちがいる。当時イェール大学に所属していた精神科医のバンディ・リー氏らは、トランプ氏の数多くの言動の影響力を考えるとそれを論じるこ...