昨年1年間に生まれた子どもの数は、全国でおよそ72万人。9年連続で過去最少を更新したことになる。
その要因は多数あり、簡単な対策で少子化がすぐに解決するとは考えられない。ただ、現在、へき地診療所に勤務しながら実感していることがあるので、今回はそれを述べてみたい。
私がいる北海道むかわ町穂別地区には、産科施設がない。勤務する穂別診療所は診療の科を問わずに患者さんを受け入れているが、出産には対応していない。この地区で暮らす人は、出産の際には70キロほど離れた苫小牧市まで行かなければならないが、人口17万人近くの同市で出産ができる医療機関はわずかひとつだけだ。妊娠中の定期健診、異常事態が発生したときなども、車で1時間半近くかけてその病院に出かけなければならない。公共交通機関で行くには早朝のバスに乗り、何度も乗り換える必要がある。これは何もこの地区だけの話ではなく、周辺の自治体すべてが同じ状況なのだ。これでは、町も「安心して出産、子育てをしてください」と若い移住者を呼び込むこともできないだろう。
医師数は年々、増加しているが、産婦人科医数はさほど増えていない。その大きな理由として、少子化が進...