今年は戦後80年。1945年3月10日未明の東京大空襲では現在の東京都江東区、台東区、墨田区などで約10万人が犠牲になったとされる。惨禍を伝える隅田川両岸の慰霊施設や戦跡を巡った。(共同通信=鈴木賢)
東京メトロ銀座線浅草駅を出ると、世界的観光名所となった浅草寺雷門。訪日客が目立ち、活気に満ちている。さまざまな言語が飛び交う一帯を離れ、隅田川の上流方向へ徒歩で約10分。言問橋のたもとに東京大空襲戦災犠牲者追悼碑が立つ。
案内板には「亡くなられた数多くの方々を仮埋葬した場所」と記されている。遺体は戦後、荼毘に付され、墨田区の東京都慰霊堂に納骨されたという。言問橋でも逃げ場を失った多くの人が命を落とし、橋の親柱の焦げたように見える部分は猛火の跡と言われている。
橋を渡り、すみだ郷土文化資料館を訪ねた。大空襲の記憶を継承しようと同館は、空襲体験画や証言を公開する企画展を今年2~5月、6~9月の2回にわたり開催。おびただしい遺体が浮かぶ川を前に立ちすくむ少年、激しく炎上する家々の間を逃げ惑う子ども―。体験画に描かれた残酷極まりない状況に言葉を失う。
「一人一人の体験者が深刻なトラウマと向き合...