「週刊朝日」が5月末で休刊した。1922年創刊の同誌は、新聞社系の週刊誌としては「サンデー毎日」と並ぶ最古の週刊誌である。そのサンデー毎日も発行部数が低迷し、決して好調なわけではない。
ただし、すべての週刊誌が厳しい冬の時代を迎えているわけではない。中でも好調なのが「週刊文春」ではないか。
「文春砲」の異名で知られる週刊文春は文藝春秋社が発行する老舗の週刊誌で、思想的には保守系の雑誌だと見られている。保守系ではあるが政府や与党に甘いわけではない。むしろ厳しい。「文春砲」の名前が示す通り、これまで同誌は与党を震撼(しんかん)させる政治ネタのスクープを連発している。最近では岸田文雄首相の長男で首相秘書官の岸田翔太郎氏のハメを外した写真を暴露して世間を驚かせたばかりだ。
翔太郎氏は昨年末、親戚らと首相公邸で忘年会を開き、来賓客を招く公的なスペースなどで写真撮影に興じていた。このときの写真が週刊文春に掲載されたことで世間は同氏の公私混同ぶりを批判。最終的に翔太郎氏は秘書官を辞任することになった。
週刊文春による政界スキャンダル記事はこれまで何回も出た。また政界ネタだけではなく、最近はジャニーズの創業者による性加害問題を報じ、海外にも発信されて世間を驚かせた。とにかく週刊文春は毎週のようにスクープを放ち、そのたびに政界や芸能界が慌てている。
岸田首相の長男の話や、これまでの政権・与党が隠していた問題を世間に明らかにしたのは、なぜか週刊文春ばかりが目立つ。もちろん新聞やテレビもスクープを出してきたが、それでも文春砲が目立つのはなぜなのか。
理由の一つはメディアとしての規模や性質の差だろう。何百人も記者を抱える新聞やテレビに比べて週刊文春は小所帯。記者クラブにも加盟していない。それでも警察や官邸の極秘情報を入手する。まるで大軍隊にゲリラが挑むようなもので、文春砲がさく裂するたびに新聞やテレビの情けなさが目立ってしまう。週刊誌には厳しい冬の時代と書いたが、この調子では新聞やテレビも冬の時代を超えて氷河期を迎えそうである。
あらゆるメディアが厳しい時代を乗り越えるためには、国民に伝えるべき情報をちゃんと伝えることが大切だ。政治家や政府が裏で何をやっているか国民に伝わらない現代こそ、本当のジャーナリズムが求められている。
(近畿大学総合社会学部教授)