大阪維新の会の笹川理大阪府議によるパワハラ・セクハラ問題。すったもんだの末、大阪維新は笹川府議を3日付で「除名処分」とする決定を下したが、この問題は今も波紋を広げている。
大阪維新は5日、所属する議員や首長ら約340人を対象にしたハラスメント問題に関する研修会を開催した。約1時間のオンライン形式の研修会ではハラスメント問題に詳しい弁護士を招き、参加した議員らに政治家としての自覚を促した。政治家である以上、24時間365日にわたって有権者の目は光っており、それに恥じない言動を日々行うよう注意を喚起したという。
ところが維新執行部が党内でセクハラ・パワハラの聞き取り調査を行ったところ、いくつかの該当案件が見つかったという。笹川府議だけではなく内部にさまざまな問題を抱えているようで、これには同党も頭を抱えていることだろう。
昨今はハラスメントの研修会を行う各企業や大学が増えている。厚生労働省も研修の呼びかけには積極的だ。大阪維新も1人の府議の不祥事をきっかけにハラスメント研修を行ったことは評価に値する。
ただ、研修会を開いて、それでおしまいにしてはいけない。研修会は一人一人の議員の自覚を促すきっかけにすぎず、その自覚を持続させることが大切である。研修会を開きました、でもハラスメントは相変わらずなくなりません、では元も子もない。
維新執行部としても、どのようにすれば党内のハラスメントが根絶できるか、議員の自覚を促せるかという点で努力を続けなければならない。少しでもハラスメントの兆候があれば、そのたびに厳しく処分するくらいの態度でなければこの問題の解決は難しい。
日本維新の会の議員の中には国会で暴言を吐いたり、審議中にガムをかんで注意された人がいた。これらの行為はハラスメントとは直接結びつかない。しかし他者への配慮が欠けるという点や、自分が他者からどう見られているかの客観的視点が足りないという点においては同根だろう。このような議員に対して党執行部が注意や処分ができないようでは、いくらハラスメント研修会を開いても限界がある。
大きいトラブルが起こる前には小さなトラブルがいくつか起こるものだ。その小さなトラブルの芽を摘むことが不祥事や事故を防ぐ最善の策。維新だけではなく、これは私たちも肝に銘じておきたい教訓といえる。
(近畿大学総合社会学部教授)