ロシアからの攻撃が続くウクライナ東部のハルキウ市に住むユリア・メドベージェワさん(27)が9日、避難のため鳥取市の鳥取砂丘コナン空港に到着した。鳥取県内でのウクライナの避難民受け入れは初めて。5月24日にウクライナを出発してからの長旅を終え、関係者から歓迎を受け安心した表情を見せた。
メドベージェワさんはウクライナ国立科学センター土壌科学・農業化学研究所の博士課程学生。鳥取環境大(鳥取市若葉台北1丁目)が外国人研究者として受け入れる。ハルキウ市で得た研究データを使い、環境大で都市土壌の農業利用の適合性などに関する博士論文研究を続ける。
鳥取空港では江崎信芳学長や担当教授となる環境学部の角野貴信准教授(土壌学)が出迎え。メドベージェワさんは「環境大をはじめ県や市、団体の皆さんに大変感謝している。ここでは安全に研究を続けられる。日本の人はとても親切で優しい」と感謝を述べた。
江崎学長は「よく来てくれた。長い旅路で疲れたと思うのでゆっくり休んでほしい。鳥取は人が優しく、美しい自然がある。鳥取を第二のふるさとにしてほしい」と歓迎した。
環境大での受け入れは本年度末を期限としているが、本人の希望で延長可能。県や市、国際交流財団などが住居確保や生活支援を行う。同市内で居住環境を整えた後、研究に取り組む。
メドベージェワさん一問一答
研究継続に感謝 戦争の早期終結祈る
ウクライナ東部のハルキウ市から鳥取市に到着したユリア・メドベージェワさん(27)は9日、同市内で報道陣の質問に答え、戦禍が続く現地の様子や研究継続への思いを語った。一問一答は次の通り。
-鳥取県に到着し、どんな気持ちか。
「ウクライナでは研究を続けることはできないが、ここでは安全にできる。住居や研究費など経済的な支援も受けられる。研究の継続や暮らしを可能にしてくれて感謝している。角野(貴信)先生の下で論文を完成させたい」
-ハルキウの現状は。
「ハルキウは絶え間なく攻撃を受けており、戦闘機が自分の上を飛んでいた。住居、病院が全部破壊されインフラも機能していない。医療品や食糧の問題もある。私がいた研究所は全て閉鎖され、研究者は給料もすぐにもらうこともできない。家では壁やシャンデリアが揺れ、窓も全て壊れた。全ての愛する人やその人たちの人生がなくなってしまうことをとても恐れていた。この戦争がすぐに終わることを祈っている」
-どのようなルートで来日したのか。
「5月24日にウクライナを出発した。ハルキウ市からリビウ州までは列車、リビウからはバスでポーランドのワルシャワに行った。飛行機で東京に到着し、待機期間を終えてきょう鳥取に到着した」
-不安なことやサポートしてほしいことは。
「今は特にない。大学と自治体の皆さんのおかげで手厚いサポートを受けられている」
-環境大ではどのように研究に取り組むか。
「ハルキウで得た知見やデータを持ってきている。それを使って、鳥取でも都市土壌の農業利用についての研究をしていきたい」
(松本妙子)