下水道写真家の白汚零さんが、普段、私たちの目に触れることのない世界を、作品とともにつづります。
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下水道で地形や構造上、高低差がある場合、滝のような勢いで下水を落とせば、底や表面を削り取る「洗掘」で下水道管を傷めてしまう。また汚水が飛散したり、かき混ぜられてしまったりすると、有害ガスの発生などがあり得る。下水を穏やかに流下させる工夫が必要だ。
らせん構造が下水道に取り入れられることは多い。コンクリート製では、まず私には東京都東村山市と清瀬市を西から東へ通る「柳瀬幹線」のらせん状マンホールが思い浮かぶ。落差約30メートル、直径約9メートル、外側に水路を設け、内側に点検用の階段を備え付けている。
このマンホール造りを任せられたのは宮大工だと言われている。神社の屋根の妻側にある造形「破風」など、曲線の施工を得意とする職人技が生きるのだろう。ここのように、らせん構造の末端までが見通せて、分かりやすいところは、私の経験上、極めて少ない。
写真からは静寂感が漂うが、実際の撮影現場は水の流れる音が響き、会話さえ不可能だった。
落差にまつわる問題を回避していく仕組みとして「ドロップシャ...