鳥取県を代表する観光地、三朝町の三朝温泉。15日は記録的短時間大雨情報が出され、猛烈な雨に襲われた。ランドマークとも言える河原風呂が増水した三徳川の濁流に埋没し、一部旅館は床下浸水などの被害に遭った。盆休みのかき入れ時が台風に“吹き飛ばされた”格好で、関係者からは「コロナが5類になり『さあ、これから!』という気持ちだったのに…」とため息が漏れた。
「関西からのお客さんが全部消えた」―。旬彩の宿いわゆの知久馬宏平社長(54)は「コロナ明けで、宿泊客の流れにいい兆しが見えていたのに残念」と肩を落とした。
16日正午前には河川水量の減少とともに埋没していた河原風呂が一部姿を現したが、石で囲われた浴槽には流出土砂などが堆積。関係者は「再開にはしばらくかかる」と話した。
町によると、三徳川の水位上昇によって排水が用水路を逆流し、旅館2軒が床下浸水した。国登録有形文化財の木屋旅館は機械室などが水没し、全ての温泉設備が使用不能になった。
同旅館は2021年の「七夕豪雨」でも浸水被害に遭っており、御舩秀社長(70)は「また内装などを張り替えなければならない」とつぶやきながら、排水作業に追われた。
同温泉旅館協同組合によると、盆休み期間中(14~18日)で千人近いキャンセルが発生したといい、建物被害などを含めると、損害額は少なくとも3千万円超が見込まれるという。