東京・渋谷の公共トイレで清掃員として働く男の、日常を描いた映画『PERFECT DAYS』を見た。主演の役所広司さんが、2023年5月のカンヌ国際映画祭で男優賞に輝いた作品である。
ドイツのビム・ベンダース監督の映像が光る。『パリ、テキサス』や『ベルリン・天使の詩』など、国際的に評価されたヒット作で知られる名匠で、日本にも根強いファンがいる。
本作品の主人公は、質素な古アパートで生活しながら、トイレの清掃に黙々と励む男。朝起きると身支度をして、自動車を運転し仕事に出かける。アパートの前の自動販売機で缶コーヒーを買う。お気に入りの音楽をカセットテープでコレクションしていて、ドライブしながら聞く。
トイレの掃除は丁寧で、心を込めて手を抜かない。仕事中に出会う人々への配慮も忘れない。昼休みになると神社の境内のベンチに腰かけ、コンビニで買ったものを食べる。見上げる男の眼には、木漏れ日が入ってくる。
仕事が終わると、銭湯まで自転車を飛ばす。行きつけの居酒屋で、ささやかな晩酌をする。時折、訳あり風のママがやっているスナックで、静かにお酒を飲む。
寝る前に、枕元の明かりをつけて、お気に入りの小説の...