【茂木健一郎のニュース探求】愛と希望の『PERFECT DAYS』

  •  茂木健一郎さん(撮影・佐藤優樹)
  •  カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した役所広司さん=23年5月27日、フランス・カンヌ(ロイター=共同)
  •  ビム・ベンダース監督=23年10月27日、東京のシンポジウム
  •  小津安二郎監督=1959年9月2日撮影
  •  映画の撮影に使われた東京・渋谷の公共トイレ。設計は安藤忠雄さん=23年5月28日

 東京・渋谷の公共トイレで清掃員として働く男の、日常を描いた映画『PERFECT DAYS』を見た。主演の役所広司さんが、2023年5月のカンヌ国際映画祭で男優賞に輝いた作品である。

 ドイツのビム・ベンダース監督の映像が光る。『パリ、テキサス』や『ベルリン・天使の詩』など、国際的に評価されたヒット作で知られる名匠で、日本にも根強いファンがいる。

 本作品の主人公は、質素な古アパートで生活しながら、トイレの清掃に黙々と励む男。朝起きると身支度をして、自動車を運転し仕事に出かける。アパートの前の自動販売機で缶コーヒーを買う。お気に入りの音楽をカセットテープでコレクションしていて、ドライブしながら聞く。

 トイレの掃除は丁寧で、心を込めて手を抜かない。仕事中に出会う人々への配慮も忘れない。昼休みになると神社の境内のベンチに腰かけ、コンビニで買ったものを食べる。見上げる男の眼には、木漏れ日が入ってくる。

 仕事が終わると、銭湯まで自転車を飛ばす。行きつけの居酒屋で、ささやかな晩酌をする。時折、訳あり風のママがやっているスナックで、静かにお酒を飲む。

 寝る前に、枕元の明かりをつけて、お気に入りの小説の...

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