【逍遥の記(18)】人類こそが地球という惑星の脅威

 森美術館「私たちのエコロジー」展

  •  ニナ・カネル「マッスル・メモリー(5トン)」(2023年)。貝殻の上を人が歩く。
  •  殿敷侃「山口―日本海―二位ノ浜 お好み焼き」(1987年)
  •  モニラ・アルカディリ「恨み言」(2023年)
  •  松澤宥「私の死」(1970年)

 東京・六本木の森美術館開館20周年を記念する展覧会のテーマは環境問題だ。半年近くに及ぶ会期で開催されている「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」展(3月31日まで)を見に行き改めて感じたのは、人類こそが地球という惑星の脅威になっているということだ。人類が生き延びるためには環境問題は喫緊の課題だが、逆に地球が生き延びるためには人類は消えた方がいいのでは?と思えてくる。

 16カ国、34人のアーティストの作品が、4章に分けられ展示されている。各章から、特に印象に残ったものを紹介する。

 ■貝殻の上

 第1章「全ては繋がっている」からは、スウェーデン生まれ、ベルリン在住のニナ・カネルのインスタレーション「マッスル・メモリー(5トン)」(2023年)を挙げたい。

 床に大量の貝殻が敷き詰められていて、鑑賞者はその上を歩く。貝殻がつぶれる音を聞き、足の裏から伝わってくる「粉砕」の感触を味わう。北海道産のホタテの貝殻だという。

 コンクリートの原料となる石灰石は、貝殻やサンゴ、海洋生物の骨が堆積し、数億年もかけてできる。貝殻の粉砕を体験させるこの作品は、その過程のほんの一部を抜き出し、デフォ...

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