美食をきめ細かに捉えるグルメジャーナリスト東龍さんが、今、東京で最も「旬」な7皿を紹介する連載、一皿目。
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瀬戸内海は魚介や果物が豊富だ。地中海よりも漁獲量が多く、世界的にみても優れた漁場であるといわれている。
瀬戸内地方の食文化を大切に、発信し続けているのが神楽坂にある「日本料理 初志(ういさね)」(東京都新宿区)だ。店主池田恒平さんが2022年9月に開業。出身地である愛媛の食材を中心にした10品ほどの「おまかせコース」(1万9800円)が提供されている。
わずかカウンター6席という小さなダイニングで、非日常感が漂う。池田さんの鮮やかな手さばきと軽快なトークを楽しめるとあって、予約も取りづらくなってきているのだ。
どれも瀬戸内の食材を生かした料理ばかりだが、特筆するべきは、夏に提供される揚げ物に仕上げた「穴子カツ」。骨身をしっかりと断っていて、「あられ粉」をまぶしているので、サクサクッとしたテクスチャーだ。脂がのっていてジューシーだが、ほんのり加えられた実ざんしょうによって、ピリッと引き締められる。しょうゆと実ざんしょうのタレも香りがいい。九谷焼の器の鮮やかな赤と緑が...