【相談】自分は趣味が全くない人間です。幸い、好きな仕事に就いており、「趣味は仕事」だと、これまで人にも自分にも言い聞かせて、それなりに充実した日々を送ってきました。しかし、定年に近づくにつれて不安が募り始め、やはり無理やりでも趣味を見つけないと、楽しい余生を送れないかもしれないと思うことがあります。(新潟県 会社員 56歳)
【養老孟司先生の回答】
私は物心ついた時から昆虫に関心があり、忙しかった大学勤めの時代を除いて、ずっと虫を調べてきました。探さなくてもやりたいことがあったので、趣味で悩んだことはありません。悩みといえば、今も箱根の家には標本箱に整理できていない虫が山ほどあります。あるのは、これをやりかけで死にたくないなあ、と思う不安だけです。もう86歳で不安は、ほとんど現実ですね。
▽楽しいと感じるのは自分自身
そういう私が今回の相談に答えるとすれば、一度、自分にとって何が「心楽しい」かを考えてみましょう、ということ。そもそも楽しむことを人に尋ねていては駄目です。あなたは「趣味は仕事」と、人にも自分にも言い聞かせてきたとおっしゃっていますが、自分の好きなことは、わざわざ他者に言...