【小川糸 一筆申し上げます】鹿との共存 美しい森を守りたい

  •  小川糸

 冬になっても、熊の出没が後をたちません。

 私が暮らしている森には、幸いなことに熊はいないのですが、そのかわり、鹿がいます。一匹や二匹ならかわいいで済まされるのですが、事態はそう生易しいものではありません。鹿たちは集団でやって来て、森の植物を根こそぎ平らげていきます。このままでは、森がダメになってしまうのです。

 なんとか鹿とのすみ分けができないものかと、私も努力を重ねてきました。乾燥させたヒトデが有効と聞けばそれをまき、唐辛子が効くかもしれないと思いつけば、刻んだ唐辛子をまいてみたり。とげのある植物を敷地の境界線に植えて、なんとか鹿の侵入を防ごうと試みましたが、結果的にはそれらも全て鹿たちに食べられてしまいました。

 そんな中、薬草の一部は、確かに最後まで鹿に食べられませんでした。とりわけ、匂いの強いラベンダー、ミント、ローズマリーは鹿対策に少しは効果があるのかもしれません。けれど、鹿との共存は、まだまだ道半ばです。

 私の中には、美しい森を守りたいという思いが強くあります。鹿と共存しながら、なおかつ森を守るというのは、とても難しい課題です。一筋縄ではいきませんし、忍耐力も必要ですし、継続...

残り 492 文字
このページは会員限定コンテンツです。
会員登録すると続きをご覧いただけます。
無料会員に登録する
会員プランを見る
会員登録済みの方
この機能はプレミアム会員限定です。
クリップした記事でチェック!
あなただけのクリップした記事が作れます。
プレミアム会員に登録する ログインの方はこちら

トップニュース

同じカテゴリーの記事