パレスチナ自治区ガザの保健当局は、昨年10月の戦闘開始以来、ガザでの死者が3万人を超えたと発表した。また、国連安全保障理事会の会合では、国連人道問題調整事務所が「ガザでは少なくとも人口の約4分の1が飢餓にあと一歩という状況にある」と人道危機を報告している。
私もメンバーとなっている北海道パレスチナ医療奉仕団では、2月23日、「国境なき医師団」日本の会長である中嶋優子医師を迎えての講演会を開催した。中嶋医師は昨年の11月から12月にかけてガザ地区に入って救急医療にあたったのだが、「これまでにない無力感を感じた」と講演で語った。中嶋医師は、これまで南スーダン、シリアなどの紛争地域で何度も医療活動にあたっているベテランだ。
以下は中嶋医師の話である。どこかで空爆の音がすると、間もなく多くの住民が病院に運び込まれる。明らかにすでに亡くなっている人は中に搬送しないが、それでも毎回、20人あまりの救命や手当てを行った。医薬品も足りず多くの人が命を落としたが、ようやく命は救えた人がいてホッとしていると、また次の空爆が始まる。やってもやっても終わりがない。がれきに埋もれたままの犠牲者もたくさんおり、...