隅田川に架かる佃大橋の上流東岸が、東京都中央区佃。時代小説や時代劇で見聞きする旧称「佃島」になじみのある人もいるだろう。つくだ煮の語源にもなったこの古い町で、水辺の散歩を楽しんだ。(共同通信=松本泰樹)
東京メトロ有楽町線か都営地下鉄大江戸線を月島駅で降り、北西に向かうとやがて、隅田川に通じる掘割に出る。堀端は細長い広場になっていて、子供が元気に走り回り、行楽客の姿も多い。歴史的な意匠の擬宝珠を付けた朱塗りの「佃小橋」と、背景にそびえる高層マンション群が好対照を成す。
掘割はL字形に折れ曲がっている。その角にあるのが、江戸初期から当地に鎮座する住吉神社だ。徳川家康が摂津国佃村(現大阪市)から呼び寄せた漁師がこの辺りに住み着き、それに伴って摂津の神社から分霊、創建された。佃島の風景を彫った欄間で飾られた水盤舎、みこしを納める倉庫として使われていた明治後期のれんが建築は、関東大震災や戦災を免れて今に伝わる。
神社の西側をやや下った隅田川べりに、老舗のつくだ煮店が並んでいる。つくだ煮は、大阪からやって来た漁師たちが小魚を塩辛く煮て保存食にしたのが始まりだという。「発祥の地の味」を求める人が...