被写体の「明日の幸せ」をそっと願って撮り続け、半世紀を超えた写真家のハービー・山口さんが、著名人を活写したカットを紹介。撮影秘話や心の交流を振り返る連載の第7回。
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シンガー・ソングライターで俳優の福山雅治とは30年ほど前、共演した音楽番組で出会った。その後、ライブツアーを収めた写真集出版のため、カメラマンを務めた。
1993年12月、福山は故郷長崎に着いてすぐ、ライブ会場ではなく先祖の墓参りに向かった。ほうきとちりとりで一生懸命、墓を掃除していた。祖先を思う心やひたむきさに胸打たれ、私は「人気者・福山雅治ではなく、人間・福山雅治を撮るべきだ」と確信した。
写真は福山と私が静岡県内の会場に着き、夕日が差す楽屋で鏡越しに撮影した時のものだ。真っすぐな瞳に人柄がにじむ。
98年、別の写真集の撮影で再びツアーに同行した。午後札幌に入り、夜に本番。福山はリハーサル前、96年に起きた豊浜トンネル崩落事故で亡くなった男子高校生の墓を訪れた。
事故現場で見つかった遺品に自身の楽曲「Message」を録音したテープがあったそうだ。ニュースで知った福山は墓に花を供え、線香を上げていた...