【香山リカ てのひら診察室】国は被害者に心から謝罪を 旧優生保護法は違憲と最高裁判決

  •  香山リカ

 知的障害や遺伝性疾患などを理由に、本人の同意がなくても行われていた不妊手術や人工妊娠中絶手術。旧優生保護法下でその被害を受けた人たちが国を訴えていた裁判で、最高裁は原告全面勝訴の判決を言い渡した。

 国は、改正前民法の「不法行為から20年を経過した時は損害賠償請求権が消滅する」という規定に基づいて「除斥期間がすぎた」と主張していたが、原告らの多くは、はじめて仙台などで訴訟が提起される2018年頃まで、手術の違法性を認識できずにいたとされる。それを受けて大阪での裁判で高裁は「除斥期間の適用をそのまま認めることは、著しく正義・公平の理念に反する」と判断し、最高裁でもその判決が維持された。

 1996年に旧優生保護法が廃止されたあとも、国は「不妊手術は適法だ」と主張し、被害者らに対して補償することもなかった。今回の最高裁判決は、著しい人権侵害に対しては「もう昔のことだから」「あのときは良かれと思ったんだ」といった釈明は通用しない、とした点で画期的だった。

 私が若い頃に勤務していた精神科の病院でも多くの女性の長期入院患者が不妊手術を受けていた。ふだんは「なんとも思ってない」「その方がいいんだ」と...

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