今年9月にフランス・パリで開催された世界四大ファッションショーの一つ、パリコレクションに、グッドヒル(本社・鳥取市)が縫製したスーツが登場した。紳士服ブランド「DAVID LAYER(デビッド・レイヤー)」を展開するCOLOR(滋賀県守山市)がグッドヒルに縫製を依頼。細部までこだわるものづくり技術が世界の舞台で好評を得た。関係者は次なるステージに照準を合わせている。
デビッド・レイヤーは社長を務める兄の伴野友彦さん(44)と取締役で弟の彰洋さん(35)が立ち上げ、グッドヒルとの付き合いは約13年に及ぶ。両社は二人三脚で紳士服づくりに取り組み、昨年初めてミラノコレクションに出品。パリコレには日本人男性テーラーとして初めての出品となった。
出品したスーツには桜、鶴、かぶとなど5種類の和柄を使用。グッドヒルは2人の要望を受け、桜模様の生地では足元に薄い桜、ジャケットには濃い桜を配置するなど、裁断と縫製の位置を細かく調整し、8月中旬からの約1カ月間で24着を仕上げた。
9月25日に開かれたショーでは、鮮やかな和柄スーツを着たトップモデルたちが次々にランウエーを歩き、番傘や扇子を手にポージングした。彰洋さんは「ゲストたちの感動が伝わってきた。日本文化が誇れるものだと実感できた」。最後に伴野兄弟が舞台に登場すると、会場の拍手が鳴りやまなかったという。
デビッド・レイヤーは11月、滋賀、東京に続く3店舗目を米国・ニューヨークにオープンさせ、2年後をめどにニューヨークとロンドンのコレクションにも出品を目指す。友彦さんは「注文が入ればグッドヒルに縫製を依頼する予定。日本の地方を拠点にする企業同士が世界を驚かせ、地方の若者らに希望や勇気を与えられたら」と海外進出を前に意気込む。
グッドヒルの管理センター生産管理課でブランド側との調整役を担ってきた寺崎宏紀さんは「パリコレの映像を見たが、夢のようで、まだ実感が湧かない」と話し、「海外に鳥取産のスーツを発信できたのが信じられない気持ち。これからも感動を与えるスーツをつくり、オーダースーツを身近な存在にしていけたら」と願っている。