インドの大手財閥、タタ・グループを世界企業に押し上げたラタン・タタ元会長が10月9日に86歳で亡くなった。グループが発表した追悼声明を基にタタ氏の訃報記事を書き始めたが、どうしても行間まで読み解けない一節があった。
タタ氏は発言で頻繁に「おそらく」という言葉を使ったという。それは「愛犬を失うと二度とこんな悲しみは味わいたくないと決意するが、また新たな犬との絆を育む」というエピソードとともに、彼の「確実性の呪縛」にとらわれない特性だったと声明で紹介されていた。
インドが本格的な経済自由化路線へ転換した1991年、タタ氏はグループの再編に着手。2000年以降は自動車や鉄鋼、化学分野などの主要子会社を通じた積極的な海外買収でグループの基盤拡大とグローバル化を推し進めた。グループ全体(対象26社、24年3月末)で年間売上高1650億米ドル(約25兆円)、時価総額3650億米ドル(約55兆円)を超える、インドを代表する財閥に飛躍させた。
ふっと思い浮かぶのは、かつて友人が旅先で川の前に立ち、「流れる音は一秒たりとも同じでない」と言ったこと。石に当たる水の強さや向きは常に異なり、無常なのよと。
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