都営大江戸線と東京メトロ丸ノ内線の中野坂上駅(東京都中野区)周辺には、新宿から青梅市を経由し甲府市に続く青梅街道が走る。江戸時代に中野宿が開かれ、多摩地域から江戸へ送る物資の集積地として繁栄。豊富な原料がもたらされ、製粉や醸造などの地場産業が盛んになった。(共同通信=藤原朋子)
中野坂上駅から青梅街道を西へ徒歩約10分の「あぶまた味噌」はその歴史を引き継ぐ。徳川家康の命で、三河の八丁みそのうまみと、京都の白みその甘さを兼ね備えるよう開発された「江戸甘みそ」を、1885年の創業以来、製造・販売している。
6代目の飯田庄太郎社長は「独特の甘みが特徴で、牛鍋や桜鍋などを提供する老舗飲食店の味も支えています」と話す。
青梅街道を東へ戻り、宝仙寺を訪ねた。江戸時代には将軍のタカ狩りの休憩所として広く知られた。境内の石臼塚は、青梅街道周辺で、そば粉をひいていたことの証し。機械化で使われなくなった石臼の供養のために築いた。
寺宝の一つが、象の牙。1728年に徳川吉宗に献上するため、ベトナムから連れてこられた象の物だ。後に象は中野村の農民に払い下げられ、象小屋で飼育されて見せ物になった。42年の死後...