「映画の祭典」といえば、カンヌやベネチアなどの国際映画祭と米アカデミー賞が有名だ。どちらも映画界の今を映し出す大イベントであることに変わりはないが、趣旨やスタイルは大きく異なる。
国際映画祭はたとえばカンヌの場合、事務局がコンペティション部門に世界中から20本前後の作品を選び、その中から映画監督や俳優ら数人の審査員が最高賞「パルムドール」などを決める。ほかにも斬新な映画を集めた「ある視点」部門や旧作を上映する「クラシック部門」などがあり、街中の映画館で多くの作品が上映される。
12日間の期間中は映画の買い付けに訪れる関係者やスター目当てのファンでごった返す。5月の陽光が差す南フランスのリゾート地ということもあり、レストランはワインを飲みながら映画談議に花を咲かせる人であふれ、ビーチでくつろぐ観光客の姿も。映画祭は文字通り「お祭り」なのである。
これに対し、米アカデミー賞は「ショー」だ。ハリウッドの劇場に正装した紳士淑女が集い、この1年を彩った映画の数々、きらめくスターたちに拍手を送る。人気歌手が生歌を披露し、ホストがユーモアと少しの毒が混じった司会で場内を盛り上げる。米国ならではの華...