文章や画像、音楽を自動生成するAIが登場して以来、人間とは何かを意識せざるを得なくなっている。「チャットGPT」が質問に難なく回答した文章を読んでいると、長い歴史を持つ言葉と人間の関係に機械が割り込んできたイメージを抱く。人間は言葉をAIに奪われる日が来るのだろうか。こういう対立の思考は打破されるべき旧弊なのか。
そう思っていたら、このところ言語関係の書籍で話題が相次いでいることに目が向いた。
版を重ねているものを幾つか挙げると、25以上の言語を学んだ辺境ノンフィクション作家の語学遍歴「語学の天才まで1億光年」(高野秀行著)や、書名がそのまま内容を説明する「千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話」(済東鉄腸著)、そしてオノマトペをキーワードに認知科学者と言語学者がヒトの根源に迫る「言語の本質」(今井むつみ・秋田喜美著)など、具体的な出来事と抽象的な理論はいずれも読みごたえあり。読み物として、この分野に活気を感じる。
雑誌「コトバ」2023年秋号の特集「萌える言語学」も、AIの時代に言語学が捉えている事象と理論を紹介する好...