歌人の枡野浩一さんが一度は諦めた芸人になるという夢をかなえるため、芸人養成所に入所した。挑戦する55歳の日々を、短歌を交えてつづる連載の第5回。
× ×
〈人生の後輩だけど芸人の先輩だから「さん」付けで呼ぶ〉
タイタンの学校に入って一番良かったのは「同期」ができたことだ。ソニー・ミュージックアーティスツの門を44歳でたたいた時、同じライブに出ている芸人はほぼ全員が「先輩」だった。僕一人年齢が極端に上だし、高校の国語の教科書に短歌は載っているし、先輩方もさぞ困惑しただろうと思う。
今55歳で毎週通っているタイタンの学校「芸人コース」には、50代が僕を含めて5人いる。全員しっかりと芸人志望だ。
若い同期生は苦笑気味とはいえ、淡々と共に過ごしてくれる。ため口で話せるのが新鮮。先日放映されたキングオブコント決勝戦も、23歳の同期生の家に数人で集まって一緒にテレビを見た。
僕には離婚後に会えていない息子がいて今23歳。息子がこんなふうにお笑い番組で笑っているといいなあと感傷に浸りながらコントを味わった。
先日は23歳たちによって「同期ライブ」が自主企画された。会場はいつもライブをやって...