緑が豊かで多くの人に親しまれる東京都新宿区の新宿御苑は、徳川家康からの拝領地に由来する。その地が近代農業発展のための試験場になり、1906年に皇室庭園として御苑が誕生。世界からの賓客を迎えた。その名残をとどめる広さ約58ヘクタールの憩いの場で時間旅行を楽しんだ。(共同通信=中井陽)
新宿門を抜けると、チケットを購入する代わりに交通系ICカードをゲートにタッチして入園できた。周囲には外国人観光客が多く、さまざまな国の言葉が聞こえる。
東へ進むとひときわ優美な建物が見えた。1896年に建造された重要文化財「旧洋館御休所」だ。宮内省内匠寮が設計した建物は、軒下にレースを思わせる繊細な装飾が施され外光を取り込む半円形の大きな出窓が目を引く。当時天皇や皇族が御苑内で休むために作られたという。
横にあるガラス張りの大きな温室では熱帯や亜熱帯の植物が栽培され、マングローブやデイゴの他ランなど色鮮やかな花々が迎えてくれる。国は明治期にこの地に牧畜園芸の改良を目的とした試験場を開設。温室を備え、海外種の栽培方法の研究などに使ったという。
南へ向かい「玉藻池」へ。家康の家臣、内藤家がここに屋敷を構え、設...