今週は、今年最後のエッセー!にふさわしくないほど、落語についての伝わりにくいお話をしてしまうかもしれない。
古典落語の大ネタ「文七元結」は、年末恒例の人情噺。博打にハマってしまった左官の長兵衛が主人公で、その借金を返すため、年の暮れに娘が吉原に身を売ってしまう。娘がつくってくれた50両を長兵衛は、お金を盗まれたと思って橋から身投げをしようとしている文七という若者に恵んでしまうが、その騒動も解決して娘も文七も助かる―という落語ファンにはおなじみの噺に、私がどう関わってきたか、1月のエッセーで書かせてもらった。
約10年前、芸歴10年弱の時に、笑い声をもらうことばかりが正解ではないと気づいて「もっと落語を信用できるように」、私が客席の反応を必要以上に求めてばかりで浮ついてしまっていたため「もっとお客さんを信用できるように」と思い直したこと。そしてこの60分以上もある長尺の人情噺に手を出したものの、噺が長過ぎて以前は2回しか演(や)ることができなかったという経緯などを紹介した。
昨年末の大阪での定期独演会で演るつもりだったが、しぐさや描写に疑問や不安が生まれてしまい、諦めて噺から逃げてしま...